【第465号】インターネットで悪口を書かれた場合に書いた本人を特定 2021年プロバイダ責任制限法改正 その1 そもそもプロバイダ責任制限法って?・改正の経緯

*:.。..。.:*・*:.。..。.:*・*:.。..。.:*・*:.。..。.:*・*:.。..。.:*・*:.。..。.:*

週刊 法会労メールマガジン

*:.。..。.:*・*:.。..。.:*・*:.。..。.:*・*:.。..。.:*・*:.。..。.:*・*:.。..。.:*

毎週金曜日発行

2022年4月1日

【第465号】

法律事務所等で働くみなさんこんにちは!
法会労メールマガジンです。

報道されているところですが,官報に掲載されている情報をもとに破産者の住所・氏名といった情報をインターネットで公開している事業者に対して,政府の個人情報保護委員会が,個人情報保護法に基づきサイトの停止命令を出しました。

事業者側は,個人情報保護委員会の聴取において「情報は官報で公開されておりサイト運営は全く問題ない」との認識を示しているようです。

事業者は,破産者の個人情報をインターネット上のサイトで提供し,本人から削除請求があった場合には2900円程度の手数料を支払うことを求めるようなことをしていたとのこと。

個人情報委員会の相談窓口には「手数料を支払ったが個人情報が削除されない」「就職などに影響する」といった苦情が約150件寄せられていたそうです。

同委員会は「人格的・財産的な差別的取り扱いを受ける恐れがある」と判断し今回の停止命令に至った模様です。

停止命令に違反した場合には,1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科され得ます。事業者が法人である場合には,1億円以下の罰金と定められています。

以前,破産者マップなるサイトが存在していて猛烈な批判を浴びて閉鎖に追い込まれたことは記憶に新しいところですね。

官報の検索で過去の破産情報が調べられることは私たちの業界では当たり前の知識ですが,そういった情報を商売の道具に使えてしまうわけです。

今回も対症療法的な効果しかないかも知れません。今後も同様の事案が出てくることでしょうね。


(編集長)



______________________________________________________________________________

【今週の掲載記事】
______________________________________________________________________________

■お役立ち過去記事紹介

■法令改正情報
インターネットで悪口を書かれた場合に書いた本人を特定 2021年プロバイダ責任制限法改正 その1 そもそもプロバイダ責任制限法って?・改正の経緯

■研修会等企画のご案内

■業務に役立つ書籍紹介

■事務員あるある

■裁判手続きのIT化情報
ウェブ会議が高裁にも拡大予定 2022年11月から

■法会労って?

■今週の雑学知識

■編集後記



______________________________________________________________________________

【お役立ち過去記事紹介】
______________________________________________________________________________

法律が公布と同時に施行となった場合,その法律の効力発生時点はいつなのか?判例・通説をご紹介しています。

第319号【お仕事雑学知識】
公布と同時に法律が施行 果たして効力発生時点はいつ?
https://houkairoumerumaga.seesaa.net/article/201904article_3.html#1



______________________________________________________________________________

【法令改正情報】
インターネットで悪口を書かれた場合に書いた本人を特定 2021年プロバイダ責任制限法改正 その1 そもそもプロバイダ責任制限法って?・改正の経緯
______________________________________________________________________________

昨年(2021年)4月21日に,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(令和3年法律第27号・改正プロバイダ責任制限法)が成立し,同4月28日に公布されました。

公布から1年6月以内に施行となる予定ですので今年(2022年)の10月頃に施行となる見込みです。

あまり馴染みのない方(私も)にはあまりピンとこないプロバイダ責任制限法ですが,そもそもどんな仕事に関係があるのか,今回の改正で私たちの仕事に影響は?といったことを複数回でご紹介したいと思います。

■そもそもプロバイダ責任制限法って?

例えば,インターネットで根も葉もない悪口を書かれたような場合,その悪口を書いた人(発信者)に対して損害賠償を請求したいといった依頼があるかも知れません。

そのような場合に,発信者の情報を開示請求する権利と,その発信者に損害賠償が認められる場合でも,プロバイダにどの程度責任があるのか,その限度を定めた法律です。

■改正の経緯

改正法施行前の現在,上記のような依頼があった場合,このプロバイダ責任制限法を根拠に発信者の情報を取得し,発信者を特定,最終的には発信者に対する損害賠償を求めるといったことをするわけですが,ちょっと大変な問題点があります。

それは,裁判手続きをいくつも経なければならないということです。
どうやって発信者を特定するのか,一般的な手続きの流れを以下見てみます。

まず,発信者を特定するためには,悪口が書かれたサイトの提供事業者(コンテンツプロバイダ)から,その悪口を書いた人を特定するための情報(IPアドレスやタイムスタンプ)を取得する必要があります。

任意での情報開示を求める方法もありますが,一般的には任意の開示に応じるコンテンツプロバイダは少ないと言われています。

ですので,裁判所に開示請求の仮処分申立てをしてIPアドレスやタイムスタンプを取得します。

これらの情報は,数字の羅列であったり発信者がサイトにアクセスした際の情報であったりと,発信者を特定するには至らない情報です。

従って,次にこれらの情報を使って,発信者の住所や氏名等の情報を保持しているインターネットの接続サービス事業者(アクセスプロバイダ)を特定し,そこに対して発信者を特定するための情報を開示するよう求めます。

アクセスプロバイダにおいては,誰がいつどのようにアクセスしたのか等を記録しているデータ(ログ)を保存していますが,その保存期間は3ヶ月程度と言われていますので,それにも気を配る必要があります。通常は任意の保存のお願いに応じるアクセスプロバイダが多いと言われています。

ですが,このログの保存に応じないアクセスプロバイダには発信者情報消去禁止の仮処分を申立てる必要もあります。

その後に,アクセスプロバイダに対して,発信者情報開示請求訴訟を提起し,勝訴判決をもってアクセスプロバイダから晴れて発信者を特定するための情報を取得するという長い道のりが一般的な対処方法となっています。

さらにここからが本番の損害賠償請求です。任意に支払ってくれることもあれば訴訟を提起しなければならないこともあるでしょう。この本番に至るまでの手続きがあまりに煩雑であるとの大きな問題点が現行法ではあるわけです。

これに手当をしたのが今回の法改正の目玉と言えます。

その他,法制定時は想定していなかったいわゆるログイン型のコンテンツプロバイダを開示請求の対象とすることの明文化やプロバイダが発信者に対して行う意見照会で発信者が開示に応じない場合には理由も併せて照会することとするといった改正点もありますが,長くなりましたので具体的な改正法の中身については次回以降でご紹介します。


(編集長)



______________________________________________________________________________

【バックナンバー】
______________________________________________________________________________

【第462号】
■裁判所に納付する手数料等は完全電子納付一本化へ その他
要綱案をつまみ食い的ご紹介その6
■動産の買取査定に行ってみた その3 旧紙幣
https://houkairoumerumaga.seesaa.net/article/202203article_3.html

【第463号】
■事務員日常小話『ヤバいコンビ』不動産編/
■執行官室が目黒の執行センターに移転! もう移転始まってます4/1には完全移転に
https://houkairoumerumaga.seesaa.net/article/202203article_4.html

【第464号】
■Outlookで送信予約 この時間・タイミングに出したいメールがあるときに便利/
■動産の買取査定に行ってみた その4 ダイヤモンドアクセサリー
https://houkairoumerumaga.seesaa.net/article/202203article_5.html


これまで配信してきました全てのバックナンバーは以下からご覧いただけます!
週刊!法会労メールマガジン バックナンバーブログ
https://houkairou-merumaga.at.webry.info/



______________________________________________________________________________

【研修会等企画のご案内】
______________________________________________________________________________


■■■ 日弁連・事務職員能力認定制度のご案内 ■■■ 

日弁連・事務職員能力認定制度のご案内です。
この制度は、法律事務員の社会的地位向上を求めて、
全国統一研修を実現させるため取り組まれた、全国の事務員の署名活動が
日弁連を動かして2008年にスタートした事務員のための制度です。
現在は、研修と試験が分離されて、より利用しやすくなっています。

★認定研修は、今年からeラーニングで受講が可能になりました。
また、過去の研修がライブラリ化されています。
これによりPCで、無料で、いつでも、何回でもスキルアップにつながる研修を受けることが出来ます。
是非、受講申込みを!

詳細は以下に掲載している案内チラシをご参照ください☆
https://houkairou-mail-magazine.com/chirashi/210917nitibenrenjimukensyu.pdf



______________________________________________________________________________

【業務に役立つ書籍紹介】
______________________________________________________________________________

■法律事務職員のための実務情報誌「法律事務」

第47号「交通事故の実務」
~自賠責保険請求から損害額計算書ができるまで~

法律事務所には交通事故の加害者、被害者それぞれから様々な相談が寄せられます。
資料の取り寄せから損害額の算定まで、実務の流れをまとめました。注意すべきポイントもしっかりおさえた一冊になっています。
2020年8月発行
頒価1,200円(税込・送料別)
ご購入申込み及び詳細は以下の「法律事務」のページをご参照ください。
https://houzenren.com/houritujimu.html#47gou



■「法律事務職員【基本】研修テキスト」

「法律事務職員基本研修テキスト」(上)(下)は、「日弁連法律事務職員能力認定制度研修」の参考図書として2014年に刊行され、多くの法律事務職員・弁護士の皆様にご活用いただいてきました。この度大幅な改訂を行い、第2版を発行いたしましたのでご案内申し上げます。

この間の実務の変更点や法改正(改正相続法、改正民事執行法)に対応し、実務的な変更事項や新たな制度を詳しく解説しています。

(上巻)
第1編 民事訴訟と事務職員の役割
第2編 民事執行総論・債権執行
第3編 民事保全・担保取消手続
第4編 債務整理・破産・個人再生
(下巻)
第5編 戸籍並びに登記簿の仕組みと見方
第6編 家事事件・人事訴訟
第7編 相続
第8編 刑事事件・少年事件
事務職員倫理

各2,750円(税込み)→(割引)各2,500円(税込み)
詳細と購入方法は以下URLからチラシをご確認ください(PDF文書)。
【メルマガ読者限定割引チラシ】
https://houkairou-mail-magazine.com/chirashi/jalapsyosekizenkan_merumagayou.pdf

なお、他の書籍につきましても価格や送料の変更がありますので、上記チラシの申込み書をご利用下さい。



■応用研修テキスト
応用1 訴訟以外の民事手続,裁判外手続
応用2 不動産競売,その他の民事執行
応用3 自己破産手続,個人再生手続
応用4 破産管財
応用5 成年後見
応用6 登記,供託,担保取消
応用7 民事訴訟の構造,弁護士倫理と事務職員倫理

実務に直結した普段の業務にも役立つ情報満載となっていてオススメです!
日弁連事務職員能力認定研修の【応用】研修のテキストとなっています。
発行者のご厚意でメルマガ読者割引をして頂いています!

【メルマガ読者限定割引チラシ】
https://houkairou-mail-magazine.com/chirashi/jalapsyosekizenkan_merumagayou.pdf


■シリーズ 法律事務所職員のための
「家事事件申立ての実務」」
「法律事務職員のための訴額・管轄事例集」
メルマガ読者限定!割引あり!
各1,760円(税込み)→(割引)各1,600円(税込み)
詳細と購入方法は以下URLからチラシをご確認ください(PDF文書)。
【メルマガ読者限定割引チラシ】
https://houkairou-mail-magazine.com/chirashi/jalapsyosekizenkan_merumagayou.pdf



■今日から弁護士秘書~事務職員新人独習テキスト
法律事務員さんの日常業務のキホンのキをコンパクトな分量で解説しています。書籍版は200円で販売していますが,PDF版はなんと!無料で配布しています。
法律事務所用語集では「J庁」「赤い本・青い本」「Z折り」など初心者には「なんのこっちゃ?」な用語が集められています。
https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/publication/book/secretary.html



______________________________________________________________________________

【事務員あるある】
______________________________________________________________________________

もう朱肉の朱が薄くなったけど,買い替えたり朱を足したりを,もう少し頑張れるだろうと先延ばしにしがち



______________________________________________________________________________

【裁判手続きのIT化情報】
ウェブ会議が高裁にも拡大予定 2022年11月から
______________________________________________________________________________

地裁での弁論準備手続期日等におけるウェブ会議が,現在,地裁支部にも順次拡大中です。

当メルマガでも予定をご紹介しました。
バックナンバーはこちら↓
第430号【裁判手続きのIT化情報】
地裁支部でもフェーズ1 ウェブ会議の運用が開始されます
https://houkairoumerumaga.seesaa.net/article/202107article_3.html#2

今年(2022年)2月14日には新潟地裁佐渡支部等の8庁にて運用が開始されています。

同5月23日には,東京地方裁判所立川支部・大阪地方裁判所堺支部・福岡地方裁判所小倉支部等合計73庁で運用開始予定です。

同7月4日からは,残りの122庁の支部で開始となり,全部の地裁支部でウェブ会議を利用することができるようになります。

そして,最高裁は,直近で,同11月7日から全国の高裁と高裁支部にもウェブ会議を拡大することを発表しました。

続々と拡大していますね。みなさんのところでもウェブ会議が日常風景になりつつあるのではないでしょうか。

なお,誤解されている方がいらっしゃるようですが,現在ウェブ会議で利用されているマイクロソフトTeamsは,今後,民事訴訟手続きのIT化のための法改正があり,口頭弁論期日等もウェブ会議で実施できるようになるとして,引き続きウェブ会議で利用されるか否かは決まっていません。

専用のシステムが構築される可能性もあれば,別のサービスに変わる可能性もあります。引き続きTeamsを利用する可能性もありますが,現時点では流動的ですので念のためお知らせしておきたいと思います。


(編集長)(情報提供:G法律事務所Iさん ありがとうございます!)



______________________________________________________________________________

【法会労って?】
______________________________________________________________________________

法会労(正式名称:法律会計特許一般労働組合)は,法律事務所など士業の事務所で働く事務員・秘書などでつくられている労働組合です。

法律事務所等で働く方であればどなたでも,ひとりでも入れる労組(ユニオン)です!


法会労の詳細はホームページをご覧ください。労働相談も随時受け付けております!
法会労ホームページ
http://www5a.biglobe.ne.jp/~houkairo/
オンライン相談申込フォームもあります↓
http://form1.fc2.com/form/?id=801887

法会労の紹介パンフレットはこちら↓
https://houkairou-mail-magazine.com/chirashi/panfuhoukairou.pdf
組合員の女性が集う女性部のブログもあります↓
https://houkairou-joseibu.at.webry.info/
組合員の若手が集う青年部のブログもあります↓
https://ameblo.jp/seinenbu-hkr/



______________________________________________________________________________

【ご意見・ご感想・ご質問は…編集部へ!】
______________________________________________________________________________

このメールマガジンへのご質問などは,以下のいずれかの方法で編集長に直接届きます。


■届いたメールマガジンに「返信」する
■編集部のメールアドレス:
houkairoumerumaga@gmail.com
にメールする

編集長のみが見て,お返事もしていますので,どうぞお気軽にご連絡ください!

今回の記事はいかがでしたか?
ご意見頂ければ幸いです!

メルマガに関すること以外の法会労についてなどもお気軽にお問い合わせ下さい!

ご連絡お待ちしています!



______________________________________________________________________________

【今週の雑学知識】
______________________________________________________________________________

卵のS・M・L,黄身の量は同一で,白身の量が異なる



______________________________________________________________________________

【編集後記】
______________________________________________________________________________

私の職場の近くには都心のオアシス,日比谷公園があります。

公園の中に図書館があるのでたまのお昼休み,予約した書籍を借りに行くために公園内を歩きます。

お昼時なこともあり,近所で働く方,観光に訪れた方,たまたま通りかかった方等など,たくさんの方々がおのおのの目的で過ごしてらっしゃいます。
心做しかのんびりされているように見受けられます。

そこを限られた時間内に本を借りて帰らなければならない私が足早に通り過ぎるわけですが,さまざまな人間模様を見ることができます。

職場の仲間で3人で,仲良くパンを齧っているビジネスパーソン風の男性3人。
一見仲が良さそうに見えますが,私は見切りました。

3人のうち1人の頭の上に3枚ほど枯れ葉が乗っています。
仲良さそうに見える3人。しかしその実,きっと他の2人は「頭に枯れ葉が乗ってるよ」と気軽に指摘ができない程度の関係にあるとお見受けしました。余計なお世話です。

すれ違うカップルの会話も聞くとはなしに耳に入ってきます。
「ジバンチンカのチンカってどんな字?」と男性が女性に聞いています。

「地盤沈下」のことだと思ったあなた。甘いです。
きっと,フランス語か何かでジュバンチユンホアのスペルを聞いたのでしょう。もし本気で地盤沈下の字を聞いていたら女性が男性を見限らないか心配です。これも余計なお世話です。

と,かくのごとく様々見ることができるのですが,私も逆に見られている可能性があることにも気をつけなくてはなりません。

少なくとも私に対してはどなたか余計でないお世話をして欲しかったものです。
急ぎ足,厳しい顔つき,大股で闊歩するオッサン。その社会の窓が全開,と事務所に帰ってからで気づくのでした。いろんな人間模様が日比谷公園では垣間見ることができるということでした。

本号も最後までお読みいただきありがとうございますm(_ _)m


(編集長)



<><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><>
週刊 法律会計特許一般労働組合メールマガジン 編集部

お問い合わせ・配信停止などのご連絡は
〒101-0044
東京都千代田区鍛冶町2-9-1
電話 03-3255-9280
メール houkairoumerumaga@gmail.com
ホームページhttp://www5a.biglobe.ne.jp/~houkairo/
<><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><>

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック